ときんについて

理事長挨拶

「西成から全国へ おとなからこどもへ 元気を繋ぐ」

 皆さん、こんにちは。このたび、健康寿命の延伸事業を支援することを目的として、特定非営利活動法人ときんを設立しました。

 「健康寿命の延伸」は、私のライフワークです。日本は健康長寿国ですが、同時に「がん大国」とも揶揄され続け、40年間、死亡原因のダントツ1位をがん死が「堅持」しています。健康寿命を損ねる大きな原因となっています。

 なぜ? 少なくとも日本は、今や医療レベル世界一。がん検診施設も整っており、国を挙げて検診率の向上に力を注いでいます。それなのに・・・ がんでは死なない国になったのと違いますの? 少なくとも早期発見が可能ながんでは。
ところが、なんと約40万人もの人が毎年がんでこの世を去っています。1位は肺がんで2位は大腸がん、3位は胃がんです。女性では、ついに大腸がんが死因の1位になってしまいました。

 私は消化器内科医なので、胃と大腸のがんで毎年10万人もの人が亡くなっているのは、とても悔しいです。内視鏡(いわゆる胃カメラ・大腸カメラ)はほとんどの病院で普通に、それも鎮静下に楽に受けられる検査です。また、内視鏡の進歩はめざましく、どんな微細な変化でも見逃しません。

 10年前に、毎年受けていた胃カメラで私に食道がんが見つかりました。胃カメラでは食道も観察できるので、ラッキーにも超早期で発見できたのです。微細すぎて、バリウム検査では見つかりません。それで10年以上健康に過ごせています。

 もし、あの時に胃カメラをせずにいたら、3年後には進行がんとなって、高額ながん治療を受けたとしても2年は持たなかったでしょう。5年以上前に私はこの世に居なくなっていたはずです。食道・胃・大腸は、簡単にがんの早期発見ができる臓器です。やっておけば助かる命を無為に捨てるようなことはしないで欲しい。そう強く願っています。

私は、2023年7月に、大阪社会医療センターに赴任しました。ここ西成区萩之茶屋は、かつては日雇労働者の街で、生活困窮者が多く住む「釜ヶ崎」と呼ばれる地域でした。10年前に西成特区構想が始まり、衛生面・治安面は大きく改善され、街は変貌を遂げました。しかし、健康・医療面においては未だに未成熟です。その付けとして、西成区でのがん死亡率が全国平均の2倍という数字に現れています。

そこでまず、西成区を「健康な街」に変貌させることが、その成果の周辺地域、そして全国への波及拡大に繋がると考え、そういう思いから、がん検診を啓発・支援する本法人を立ち上げることにしました。「ときん」という名称は、将棋の歩(ふ)になぞらえ、歩が「西」から「成」って「と金(ときん)」になり力を発揮するという意味を込めたものです。

 では、健康寿命が延びればどんないいことが起こるのか? まず、本人が幸せになるとともに、周囲の人たちが楽になります。介護や世話が不要で、自分の仕事や趣味に専念できます。そうすると生産性が上がりGDPが上昇します。また、本人は医療費が安く付き、介護料はかかりません。社会貢献はできるし、消費も拡大します。これらが回ると経済効果が上がり、雇用拡大に繋がるので、子育て世代の元気に繋がり、少子化にも終止符が打てるという、地域社会のエコシステムを好循環させるアクセルに、健康寿命の延伸がなりうると確信しています。

 サントリーホールディングスの鳥井信吾副会長(大阪商工会議所会頭)、小野薬品工業の相良暁会長(大阪商工会議所副会頭)をはじめ、多くの方にご支援をいただき感謝申し上げる次第です。なかでもスーパー玉出の運営会社であるアイセリアリティー・グループの湯本正基社長(本法人副理事長)には、この事業にかける熱い思いと絶大なるご支援に特段の感謝の意を表するとともに、同じ西成区を愛する同志として、ともに支え合い、飲み交わしながら、ご支援いただいている多くの方々と夢を語り、それを実現させていきます。

 「歩」は「少し(だけ)止まる」と書きます。歩き続けると考える時間が取れず失敗するし、多く止まると先に進めない。歩は止まって少し考えて歩くので「ときん」になれるのです。これは、名前を将棋好きのお父上から授けられた歩(あゆみ)という方が、40歳になって自分の名前の意味が初めて解釈できたということを聞いて、なるほどと合点がいったので、その受け売りです。

 課題は山積みで、がん検診事業が順調に動き出したら、次には認知症の早期発見推進事業を開始します。皆さんの末永いご支援をよろしくお願い申し上げます。

代表理事  荒川 哲男

令和7年6月吉日

特定非営利活動法人ときん
理事長 荒川哲男

団体概要

団体名

特定非営利活動法人 ときん

設立

2025年5月27日

所在地

〒557-0044 大阪市西成区玉出中1丁目11番17号

目的

 この法人は、地域の住民を対象とし、地域の包括的な健康・医療・福祉活動の支援を通じて、健康弱者(がん、認知症など)の発見・健診勧奨および治療勧奨、健康増進体制の構築と、その背景にある教育、環境、就労、経済などの多様な生活関連課題の解決に向けた多種機関(自治体、病院、大学、企業など)の協働による包括的な支援・解決体制の構築と実施により、元気と笑顔あふれる先駆的な地域共生社会(地域共生モデル都市)の実現を目的とする。

役員

理事長

荒川哲男

副理事長

湯本正基

理事

田中成和 河田則文 小林正宜 山本時彦 相良暁 鳥井信吾 小林栄樹

監事

上田光隆